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第10回「なぜこの業界はネーミングセンスがないのか」
2025年2月4日 New
こんにちは、橋本です 1月2月は毎年最繁忙期なうえ 「働き方改革」施行から 1年経つタイミングということで 外メディアからの取材対応などもあり、 非常にバタバタしている… ※メールやTwitterの返信ができない または遅れていますが しっかり読んで記事に反映していくので 今後もどしどしお待ちしております! そんななか、1月27日でしたかね、 フジテレビの記者会見に行ってきました。 突然27日と決まったので、 先約をわざわざリスケしてもらってしまったが、 かつてより同局が制作した 女性トラックドライバーにまつわるコンテンツに対して、 そして、 そもそも同局のメディア倫理に対して 色々と深い問題意識を持っていたので 必ず出席したかった。 会見には400人を超える取材陣が来ていました。 前のほうの席は確保できたものの、 1人10分くらいかかる質問に、 400人が手を上げる会場では なかなか指名してもらえず。 最後までいたかったんですが、 次の日に盛岡講演があり、 結局当てられないまま途中退出。 帰りしな、同期のジャーナリストからは 「最後までいないの?早いね」 とか茶化されましたが、 すでに会見開始からは4時間以上経っていて 「早い」わけではない(笑) みんなもう感覚がバグってんな、と思いました。 続きは家に帰って準備しながら最後まで見てましたが、 さすがに10時間半はやりすぎです。 これまでビッグサイトの小さなおもちゃショーから 各国首脳らが集まる国連総会まで 多くの記者会見に出席してきましたが、 今回の会見で改めて感じたのは 「なんでも無制限にやりゃいいってもんじゃない」 ということでした。 時間も参加媒体も制限なくやることで、 会見全体の質が悪くなり、 さらに「質問」というよりは お気持ち表明、怒号、ケンカ をふっかける人たち、 ルールを守れない人たちなどが 集結した感がありました。 (ちなみに語気が強い記者に対しては 私はめっちゃアリだと思っている) これは、どの業界も同じです。 繰り返しになりますが、 なんでも「やればいい」ってもんじゃない。 運送業界でも最近改めてそう思わせるものがあります。 「ネーミング」です。 というわけで今回は、 橋本がこの業界に対して 「絶望的にセンスがないと思う理由」、 を話していきたいと思います。業界のネーミングセンス
この業界には事あるごとに ネーミングセンスのなさを思い知らされる。 別に 「若者に刺さるワードを考えろ」 「世間をあっと言わせろ」 などと、 難しい注文をしているわけではありません。 せめて 「業界の足を引っ張るようなネーミングを付けるな」 と言ってるんです。 拙著2冊目を書いている時から指摘しているのですが、 「2024年問題」という言葉。 誰が付けたのかは知らんが、…非常に非常によくなかった。
何がいけないかというと、 この言葉にある「一過性」です。 今、かろうじてまだ「2024年度」ですが、 すでに2025年に突入。 当然、来年は2026年になる。 2024年問題と名付けた人は、 このいわゆる“2024年問題”とされている事象が 再来年の2026年においても “2024年問題”として世間が気に掛けると思ったのか? 今までこれだけ「2024年問題だー!」 と運送業界が訴えまくった荷主でさえ 2024年度の「荷待ち・荷役」時間が 2020年度からほぼ変わらないという 悲惨な結果がこのほど国交省から出たばかりです。 秒で情報に飽きる世間が 今まで意識してこなかった物流の「2024年問題」を 2025年、2026年と継続して意識するわけがない。 そもそも2024年問題というのは ノストラダムスじゃないんだから。 「1999年某月某日」、 地球が滅亡するとされていたノストラダムスの大予言は、 ハズれば「めでたしめでたし」で終わるが、 2024年問題というのは、 施行日はゴールなのではなくむしろスタート。 2025年になった今、 世間が「2024年問題」なんてネーミングの事象に 今後関心持つわけがないんです。 実際、「2024年問題」の世間の関心度を データで見てみても明らかです。 一番盛り上がっていたのは まさしく2024年4月1日。 それ以降はダダ下がっているというのが 数字にも出ています。 下の図は、物流の2024年問題に対する 世間の「関心度」の推移を表したグラフです。 2024年4月1日以降、「急減」しています。 今後この問題を抱え続けていかないといけない業界。 いかにネーミングが大事かが分かります。センス皆無な過去の「ネーミング」
私が彼らにネーミングセンスがないというのは、 この「2024年問題」だけではありません。 送料無料、 トラックGメン、 トラガール と枚挙にいとまがありません。 私が「ネーミングセンスがない」と指摘しているものには、 ある共通点があります。 「ウソ」です。 送料は無料じゃないのに送料無料、 女性トラックドライバーは少女じゃないのに「ガール」、 過去にも「麻薬Gメン」「万引きGメン」といったように 取り締まりの対象が名前に使用されるところを 「トラックGメン」 すべてのネーミングが 「ウソ」で構成されているんです。 ※ちなみに「Gメン」のGとは Government (政府)を指します。 それに「男性」を意味する「メン(men)」を付けた クソダサい昭和の言葉です 「2024年問題」も 2024年だけでの問題じゃないのに 「2024年問題」としているというわけ。 「なんでも付けりゃいい」もんじゃないのに 今後の展開も考えず 適当に付けたんやろなと容易に察せます。 さらにですよ。 そんななか、その一方。 最近こんなことを言い出しています。 「下請」という言葉はよくない……は?
この下請という言葉には ウソの要素が1つもありません。 政府や一部勘違い現場各位いわく、 「上」と「下」というのが 「パワーバランスをしめしている」 or 「下」というとバカにされたように感じる というのが言い分のようですが、 本来この「下請」の下は 「強さ」を示すものではなく 「上流」「下流」という「流れ」を示したものです。 例えば運送より裾野の広い製造業で 「下請」という言葉が言えなくなれば、 それは混乱を起こします。 また、現に存在する「元請」と「下請」における パワーバランスが解決されないなか、 変に名前を変更すると、 それはそのパワーバランスの隠蔽や 問題の矮小化にも繋がりかねない。 10000歩譲って改名するにしても 「今じゃねえだろ」 という思いにしかならないんです。「言葉狩りだ」という人たちへ
こう主張すると、必ず出てくるのが 「名前なんてどうでもいい」 「言葉狩りだ。そんなものにこだわっても業界は変わらない」 という声。 マジで何言ってるのか分からない。 「名は体を表す」という言葉があるように、 とりわけ、カタチの残らない、 実態が世間に見えにくい業界にとって、 このネーミングは非常に大事なものです。 特に、上述したように2024年問題という 関心がもたれず 「過ぎ去った」と思われる問題にとっては。 そういう背景もシカトし、 自分の視野と感覚でしかモノが見られない人ほど 私にこう言ってきます。 「オマエに現場の何が分かる」 まあ、現場にいるのに分からない人もいるんやなと 冷めた目で温かく見守っている次第です。 一方、この業界の机組に ネーミングセンスが皆無なのは、 ひとえに純粋に 「現場感」を知らない(経験したことがない)から です。 毎度謳い文句のように言っている 「いつの時も現場のルールを作るのは現場を知らない人たちだ」 という言葉。 より正確に言うと 「現場感を知らない人たちによってルールが作られるから 現場が疲弊する」 ということです。 では、2024年問題はなんと表現するべきだったのか。 これは2冊目の書籍にも書いていますが、 これです。「物流崩壊元年」
2024年を「物流崩壊元年」にすることで、 2025年を2年、2026年を3年と カウントアップすることがでます。 そうすると、問題は2024年で留まらず、 話題としても継続して取り上げやすい。 例えば物流崩壊7年目にあたる2030年には かつてより元年時より 荷物が35%運べなくなる と言われていたわけですから、 そういった ピンポイントの年で起きる出来事も 提示しやすいというメリットもあります。 「面」ではなく 「点」でしか見ないようにしていけば、 そりゃ物流は どんどん見えない化していくにきまっている。 改めて思います。 ネーミングって、大事です。 だからこそ、 なんでも付けりゃいいってもんじゃない。 それではまた次回v2025年2月の投稿一覧
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プロフィール
橋本愛喜
フリーライター。
元工場経営者、日本語教師。大型自動車一種免許を取得後、トラックで二百社以上のモノづくりの現場を訪問。
ブルーカラーの労働問題、災害対策、文化差異、ジェンダー、差別などに関する社会問題を中心に執筆中。
各メディア出演や全国での講演活動も行う。 -
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