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    本当にこのままで大丈夫?国交省の「実運送管理体制簿」のズレたルール

    2025年3月20日

     
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    来月4月1日からスタートする「実運送管理体制簿」。     トラック事業者であれば作成義務が課せられる、と言われているこの管理簿。 管理簿の作成は「義務化」であり、荷主から荷物の運送を委託されたトラック事業者は必ず作成する義務が生じます。   ここで実運送管理体制簿の作成主体についておさらいしておきましょう。   【作成主体】 ①荷主(真荷主)ートラック事業者(元請け)ートラック事業者(一次受け)ートラック事業者(二次受け) この場合、作成義務は「元請け」であるトラック事業者が作成義務を負います。     ②荷主ー利用運送事業者(真荷主)ートラック事業者(元請け)ートラック事業者(一次受け)ートラック事業者(二次受け) この場合、荷主から荷物運送依頼を受けた利用運送事業者に作成義務はなく、利用運送事業者から荷物の運送依頼を受けたトラック事業者に作成義務があります。     なぜ、この管理簿の作成が義務づけられたのか。 目的は「運送業の多重下請構造を是正する」ためです。     長時間労働、低賃金の原因となっている多重下請構造の実態を把握し、下請は2次、3次までに制限していこうとすることが目的とされています。     運送業にとっては念願の多重下請へのメスの第一歩であり、作成への負担はかかってくるけどやるだけの価値があるという認識でもあります。 なので私はこの「管理簿に」ついて運送業全体で落とし込みができていると思っていました。     実際に運輸局主催の勉強会に参加をした際も契約書面化と並んで理解しようとするトラック事業者が大勢いることもそう思った背景でもあります。   私も先日から国が発表している例をもとにフォーマットを作成し、協力会社さんへ聞き取りを始めていたところでもあります。    

    大手運送会社が知らない実運送管理体制簿

      そんな中、いよいよ取引先である大手運送会社数社に「管理体制簿、どうやって作ります?」と問い合わせをしたのですが各社揃って   「え?何それ?初めて聞いたんやけど!?」   という回答しかもらえませんでした。これが2月時点の話です。     施行まで2ヶ月を切ったタイミングで大手が知らない、ということがあり得るのか?と思って違う営業所にも問い合わせをしましたが全ての営業所で「知らない」という回答しかもらえませんでした。     流石に何かおかしい、と思って運輸局に電話で問い合わせをしてみました。   すると、まさかの結果が待ち受けていたのです・・・・    

    運輸局の回答

      大手運送会社がその存在すら知らなかった現状もあったので   まず、大手運送会社が実運送管理体制簿について全く知らないのだけどどうしてか、という話をしました。   運輸局側の回答は「大手運送会社の多くは利用運送事業免許を取得しているので作成不要、という認識から現場にその認識が降りてきてないのではないか」というものでした。   最初に記載した通り、実運送管理体制簿の作成ルールでは   「利用運送事業者に作成義務はない」ため、利用運送事業者はこの管理簿を作らなくてもいいのです。     つまり、大手運送会社のチャーター手配については100%まるっと協力会社へ委託するから作成義務のない「利用運送事業者」となり、作成義務はない。 だから現場にもその情報が降りてきていないんだろう、という回答でした。     私は一旦ここで納得してしまったのですが、別の運輸局の方から「その認識(大手運送会社が利用運送事業者となる)はおかしいのではないか」という指摘も頂けたのでもう一度近畿運輸局に電話をしてみました。  

    運輸局と国交省の回答に愕然とする

      質問内容をしっかり把握してもう一度運輸局に問い合わせをしてみました。   「利用運送事業者」の定義についても合わせて確認をしました。   つまり、水屋のような車両を持たない利用運送事業者だけではなく、車両を持ち合わせた運送会社であって貨物利用運送の免許を持っている運送会社であっても作成義務がないのかどうかを確認してみたんですね。   そのやりとりがこちらです。     【運輸局と私】 運「車両を持つ運送会社であっても「利用運送」であれば作成義務はありません。」 私「ということは、たとえば利用運送事業者から荷物を受けた私たち中小の運送会社でも利用運送です、と言って受けて荷物を依頼する場合は作成義務がない、ということですか?」 運「その認識で合ってます」 私「心の声(ええええええええええええええええええええええええええ)」   いやいや、ちょっと待て待て。 おかしい。それはいくらなんでもおかしい。 その前に聞いた運輸局の人も同じようなことを言っていたけど流石にそれは間違ってるんちゃう??     と思ったので国土交通省にも問い合わせをしてみました。     【国土交通省と私】 国「車両を持つ運送会社であっても「利用運送」であれば作成義務はありません。つまり、利用運送事業約款においてではなく貨物自動車運送事業約款において荷物を受ける場合に作成義務が生じます」   私「ということは、貨物自動車運送事業約款において荷物を受ける会社に到達するまでの全ての運送会社が利用運送事業です、って言えば作成義務がないということですか?」   国「はい、そうです」   私「そもそも、その荷物を受ける場合に私は貨物自動車運送事業約款で受けますとか利用運送事業約款で受けます、というのはどう判断するのですか?」   国「いやいや、そんなの契約まくでしょ?」   私「スポットの場合、契約まくタイミングなんてありませんよ」   国「だとしても基本は契約で判断します。」   私「この管理体制簿の目的は下請構造の是正ですよね?」   国「はい、そうです。トラック事業者(つまり貨物自動車事業約款における運送会社)内での下請実態を調べるのが目的です」   私「利用運送事業者の下請の実態を調べる、という目的ではなく?」   国「そうです。まずはトラック事業者内の下請実態を調べていきます」   うん、みんな、OK? 私この時点でちょっともうあかんかったわ。     トラック事業者の中の下請実態よりも利用運送事業者が実運送までに何社もかんでることが問題で、その多重性の解消が最大の目的なんじゃねえのおおおおおおおおお???     我々運送業は「悪質な水屋の排除」を目指してルール化にも取り組んでいこうとしていますが、え?何?その利用運送側の実態把握はされない? へええええええええええええええ。     そうですか。 だとしたらこの管理簿作成は形骸化しますね。 全員利用運送事業免許を取得して利用運送事業者となれば作る手間も省けますし今まで通りたんまり手数料ももらえますもんね。 多重下請の実態把握なんて永久にできませんよ。     ということを10枚くらいのオブラートに包んでお伝えしておきました。     今回、聞いたことをまとめるとこの通り。      

    国は何をゴールとしているのか

      トラックGメンしかり、現場の声を荷主に届けていこうとする動きはとても活発になっています。   本当にありがたいことです。   しかし、ルールを作る官僚側が「現場の声を聞く姿勢」ではない。   わかりますよ。結果が欲しいんですよね。   自分たちが作ったルールでどれだけの成果が上げられたのかを具体的な数字にしたいんですよね。     今回の利用運送事業者の作成義務なしルールは実運送をする前の1〜2社のみが作成をすれば良いわけで下請制限を行う2次受けまで、という目標をきっと簡単にクリアできるでしょう。     しかし、それは現場の疲弊を解消するものではありません。     運送業が是正したいことを解消するものでもありません。     目標数値により早く辿り着けるためだけの形だけの数字でしかありません。     本当にそれでこの国の運送業がよくなると考えているのであれば甘すぎます。現場との意思疎通ができるはずもありません。     ルールを作るのであれば現場の課題是正のためのルール作りをしてください。     このルールについてまだ知っている人は少ないと思います。   国が作成した管理簿作成主体のフロー図では利用運送事業者が1社しかなく、実運送事業者の間に何社も利用運送事業者が入るという前提ではないからです。    

    まとめ

      実運送管理体制簿は多重下請構造の是正を目的として作られました。   来月からはもう作成が義務化され、1年に一度荷主へも閲覧してもらうなどのルールも付随しています。     私たち、運送業側の多重下請構造是正は水屋をはじめ、実運送までに何社も会社が介入している構造の是正。ですが   国側は利用運送事業者は排除した部分だけの下請構造の是正、という認識です。     すり合わせをしたであろう認識に大きなズレが生まれています。   このズレを解消していかなければ足並みは揃わない。   今一度、本当にこのルールで良いのかどうか検証して検討して再度作り直してもいいのではないかと思わずにはいられません。
     
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